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ウニという野良猫 [記憶]

だいたいは玄関前で僕の帰り待つようになったその猫でしたが、
ある日玄関前から少し離れた場所に猫の群れの中にそいつがいました。

5~6匹ほどでしょうか。
僕に気づくと、みんな一斉に警戒の眼差しを僕に向けた。

警戒することにもされることにも慣れてしまったせいか、日常的なシーンにも思えました。

すると、そのうちに一匹が僕のほうにゆっくりと近づいてきます。

やつです。

玄関前で僕を待ち、お腹を見せて甘えん坊のポーズを取るやつが近づいてきたのです。

その時でしょうか。やつに出会ったのは、何か運命のような事に思えたのは。

僕はその日、初めてそいつを家に入れてみました。
扉を開けて、家に入ってみるよう招いてみましたが、さすがに警戒して様子。
しかし、一歩一歩ゆっくりと足を前に出し、玄関からキッチンのほうに進んでいきました。

僕はそれを後ろから見守りながら、後を追うようにゆっくり家に入っていきました。

リビングに入ると、真っ先に向かったのは合皮素材の2Sソファ。座面に飛び上がりました。

すると突然、座面をガリガリと爪研ぎをし始めたのです。

何も知らない僕は、慌ててやめさせようとしました。
するとやつはそれに抵抗せず、素直にやめてくれたのです。

しばらくするとソファから離れ、次はテレビボードの上にのぼり、
電源が入っていない画面真っ暗のテレビ画面と睨め合いっこ…笑

なんだか見ていて、ただただ微笑ましたかった。そんな記憶です。

やつが部屋でうろうろしている間、冷蔵庫の中からウィンナーを取り出し、
いつも玄関前で差し出している粒々ウィンナーをお皿に入れてやりました。

お腹が空いていたのか、それに気づいたやつはすぐに飛びついてきました。

ウィンナーをむしゃむしゃと食べている間、僕はその様子を見ながら考えてました。

このままこいつをここで飼ったら暖かいし、ご飯も食えるし、お水も飲めるし。

しかし、そんな空想を現実が容赦なく突き刺してきます。

あかん、あかん…

僕はすぐにその考えを切り捨て、食べ終わったやつをまた外に出してやりました。

奴は、玄関で立ちすくむ俺を振り返って見つめ、どこか寂しそうな表情をしていました。

ごめんな…
あかんねん
あかんねん…

心の声が、そのまま声帯を介して、言葉として漏れていました。

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