彼女たちの眼差しとウニと僕 [記憶]
しばらくして、玄関前でやつにあげるご飯を猫缶などの専用食に切り替えました。
そんなある夕方の日、彼女と玄関前でやつと戯れていた時でした。
「ニャンタだ!ねえお母さんニャンタがいるよ!」
母の手を繋ぎ、もう片方の手で猫を指し、そう言う子供の姿がありました。
「本当だ!ニャンタがいるね」
とお母さんも便乗して指を指しました。
やつを撫でてた手をすぐに放し、しゃがみこんでいた体をすぐに起こしました。
「こんにちは。」
僕はそう言い、飼い主さんなのかどうかを尋ねてみました。
「違うの。実は私たちも探していたんですよ。」
どうやら、僕たちがこの猫と会うずっと前から、
婦人とその子供が時間を見つけて餌をあげていたそうでした。
婦人、引き取ろうか何度も迷ったとそうなのですが、自宅には既に数匹の猫や犬でいっぱい。
ご主人にも相談をしてみたそうですが、さすがにこれ以上は…ということで承諾にならなかったそうです。
そう説明をしてくださった直後に、その婦人の目の表情が変わり、改まった眼差しで僕を見てきました。
「飼いませんか??」
ストレート過ぎる。会ってまだ間もない相手にそこまでストレートに言えますか?笑 すごい。
実は僕…猫アレルギーなんです。笑 そして彼女も猫アレルギー。
二人してアレルギーを持ち、その猫をたくさん触れたおかげで咳や肌の痒みが止みませんでした。
そういった理由を婦人に説明すると、さすがに納得された様子で、すぐに話題を変えられました。
しかしよくよく話を聞くと、猫の飼い方や慣れ方などといった内容の話で、
あたかもこれから僕たちはこの猫を飼いますという前提で話が進み、途中で置いてけぼりになりました。
でも…彼女は熱心に聞いていました。なんで??笑 え?なんでなんで?笑
婦人の話が終わると、次は彼女に真剣な眼差しで見つめられました…。
同様に、隣にいる婦人も僕を見つめてます。
「え…そうなん?そんな感じ?そうなんや…そっか…」
泣き寝入り…というわけでもないが、とりあえず試し飼いということで話が進み、
その日から、ウニと僕とおんぼろアパートの日々が始まったのです。
つづく
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