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ウニのプリズン・ブレイク的な出来事 [記憶]


初めての病院に連れていってから数日が経ち、
炎症を起こしていた足もようやく地面に着くことができるほど回復していました。

さぼっていた体力がリバウンドするかのように、ウニは部屋のあちこちを走り回っていました。

バタバタ…

ドスンっ!

バタバタ…

部屋中から繰り返し聞こえるその騒音に耳を塞ぎたくなる気持ちにもなりましたが、
足の炎症ですっかり元気をなくした数日前のウニを思い浮かべれば、それは微笑ましい光景と音。

僕は彼女と親が子を見守るような眼差しで、そんなウニを微笑ましく見ていました。


やがて走り疲れたのか…
最近頻繁によく寛ぐウニの「定位置」に移動し、そのまま座り込みました。


その日、彼女と僕はお互い仕事が休みで、いつも通り部屋でくつろいでいました。

比較的天気が良かったその日、季節はまだまだ寒さが続く2月の中旬をさしかかろうとしていた時期。
太陽は燦々と照り、眩しいほどの日差しが部屋を差し込んでぽかぽかしていました。

灯油ストーブを焚いていたこの部屋に喚起をしたかったので、各窓を半開き状態し、
少し部屋の掃除をしました。

水につけた雑巾を手で絞り、フローリングの端から端まで一休さんのように拭いていく僕の傍らで、
家具などについている埃を丁寧にふきとる彼女。

ぴくりとも動かないウニがただただ僕たちを見つめていました。

お互いがそれぞれの役割分担で部屋掃除を行い、それなりの汗をかきました。


頑張った自分たちのご褒美に…

僕たちは風呂場の湯船にお湯を溜め、トレイに缶ビールを載せて、
贅沢にも昼間から酒風呂を楽しむことにしました。

酒風呂の定番スタイルである「頭にタオル」を乗せ、
ほろ酔いになりながらも、僕は既に3缶目を開けようとしていました。

それから彼女と他愛のない話を交わし、このロケーションに充実を覚えていたとき、
何か「違和感」という感覚に陥った僕は、「少し外の様子を見てくる」と言い、一旦風呂場から出ることに。


その違和感とは…

いつもだったら、僕たちがウニの前から姿を消すと、か細い声で鳴くのです。

さっき部屋中で走り回っていた疲れのせいで、鳴くことさえも面倒なんだろうとしばらく思い込んでいたの
ですが、もう一つの可能性も頭に過ぎり、僕はそれを確認しておきたくて風呂場から出ました。

残念ながら、予想は的中していました。

ウニの定位置スペースに彼の姿がない。
他の部屋にもウニの姿はなかったのですが、喚起の為に半開きにしていた「腰窓」の、
開けた覚えのない網戸が開かれており、その向こう側の隣の家の塀のてっぺんにウニの姿がありました。

「あーーっ…」

と声が出た僕にウニが気づき、しばらくお互いはそこから見つめあっていました。

「どうしよう…」

とりあえず、窓の方に体を近づけると、ウニは大勢を起こしました。


窓から手を伸ばすと、ぎりぎり塀には手が届く距離にウニがいて、
僕はそこからウニを引っ張り戻そうとしました。

状況が分からない彼女は、相変わらず風呂場でお酒とお菓子を楽しみ湯船に浸かっていた頃でしょう。

一方で…ウニが脱走したというこの状況の中、僕は一歩…一歩…とゆっくり窓に近づき、ゆっくりと手を
窓から突出し、ウニの体に届くまで手を伸ばしてみました…。


「もうちょっとや…あともうちょっとや…」

少しウニの毛に触れた途端、ウニは一気にそこから地面を蹴り上げ、全力で走り去りました。

「うーーわ…まじか…終わった…」

とりあえず、湯船に浸かっている彼女に状況を簡潔に報告し、僕は着替えて、すぐに家を出ました。

僕は脱走したウニを捕まえに、近辺を走り回る羽目になったのです。


つづき


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